第2回
セガサターン版『NiGHTS』A-Lifeプログラマ 片野 徹
(現・第一GE研究開発部)

 「ナイツの思い出を」。奥成君に突然そんなテーマで原稿を頼まれてみたものの、もう11年もたっているわけです。その間個人的にも色々ありましてよく覚えていないのですが…。確実にいえるのは、僕にとっては、いわゆるソニックチームというところに入った初めてのプロジェクトで、入って、触って、最初のミーティングで「なんで夢なのに3Dで自由に飛べないんですか?なんで時間制限があるんですか?」という質問を皆さんの前でしたということです。
 みなさん、『あー、きたきた』という顔で、でもその経緯について詳しく説明しようとしてくれました。でも、僕の中に残った台詞は大島さん(ディレクター)の「夢って、思い通りになるようで結構、思い通りにならないじゃない?」といったようなものでした。ああ、なるほど。そうか。夢っていうと思ったとおりに、やりたいようにっていうイメージが自分の中にはあったけど、このプロジェクトでは夢はそういうものじゃなくて、もっとリアルな、精神世界の営みの再現だったのか、と思って全てが納得できた覚えがあります。
 3D飛行にしても、実は僕が入る前に既に実験済みで飛ぶのがすごく難しくてむしろ気持ちよく飛べなかったんですね。世界観としては夢は思うとおり行かないけれど、飛ぶという手触りに関しては気持ちよくしたかった…ディレクションて大切だなって思います。

 で、最初にやった仕事はなんだったか忘れましたが、アラームエッグ、当時は「時の番人」というコード名で、モデルが違うものだったんですが、たしかアイテムのモデルだった時計が使用されて。なんか光が当たっているところを8角形にしてコリジョンとって地形の上に描画されるようにしたりとか細かいことやって。
 あとイデア。サターンだと半透明処理が難しいのでメッシュでしたが、これの動きとか作って。あとナイトメアの爆発。ナイトメアンを倒すと爆発するじゃないですか。あれも当時Zバッファがないサターンというハードでどうやって変形スプライトや回転スクロール面でポリゴンを切るかというと、断面で頂点を作るしかなくて。そんなことをやってみたり…。でキャラクタ&ステージセレクトがまた、いや、その話はいいです。時効です。(笑)

 で、とうとうA-Lifeですよ。
 よく知らないものだったんですが、中さんやメインプランナーの飯塚と担当企画と話していてどういうものを狙っているかという話で「アクションゲームが苦手な人でも、何度も足を運んでなんとなく眺めてしまうような、動く背景」という認識で作り始めました。
 でもこれが甘すぎでした。かわいいんですよ、動き始めると。スペックにそんなこと書いてないのにピアン同士が近づいたら、やっぱり話くらいするよねーとか思うとそれをプログラムして、じゃあ何を話しているのかといえば「ねえ、知ってる?最近紫色のナイトメアンがあたしたちを異世界に飛ばしまくってるんですって!」「いやあね、物騒な世の中ね。今度見つけたら一目散に逃げなきゃね!」とか、逆に「あの紫のトゲの人が危ないところを助けてくださったのよ!」「まあ、さすがね…」とか、そういうのだよなあ、とか思うと、じゃあ会話したピアンのナイツの好感度は伝播するようにしようとか、とにかく勝手に妄想が膨らんでプログラミングしてしまったんです。これが仕様書に残してないので移植された方には大変な苦労をおかけしたと思いますが..。
 最初ピアンを見たときは、正直「気持ちワル…」と思ったものです。まあ、僕の場合いつもそうです。ぺパルーチョも最初はねえ、アレでしたし。
 でも、ピアン、メピアン、見た目はアレですが動き出すと愛着が湧いてきまして、メピアンなんか頭の中では「わーい僕も仲間に入れてよ、遊ぼうよー」とピアンの群れに近づいていくと「うわ、なんだあいつ?腕がヤドカリだ!ピアンじゃないぞー」とか、要は人間の子供にあこがれる妖怪人間のようなイメージが頭に浮かんで気がついたらそうなるようにしてたとか…。もちろん企画、デザイン、サウンド担当者が一緒になってピアンに注いだ愛の結晶なわけです。特にサウンドさんには今でもゲームにサウンドが関った特殊な試みとしてインパクトが強いらしく何かにつけてあんなのまたやりたいといわれたりしますし、デザイナさんも当時は「こんなアニメーション作ったんだけど入れられない?」とかよくありましたので、ある意味暴走していはいましたが、僕以外の関係者にも特別だったと思います。

 自分の担当箇所と直接関係ないことですが、マルコンも感慨深いものがあります。
 セガマルチコントローラー。通称マルコン。すばらしいネーミングですよね、丸いんだもん。ストロークはほとんど拾えないけどナイツ専用かと思うほどにナイツのためのコントローラーでしたね。プラットフォームホルダーだったからやれたことですね。懐かしいです。いや、頑張ればこれからもできるか?

 サターンの本体バックアップは電池が切れるとなくなっちゃうので、PS2版ではデータが消える心配をせずにピアンを育てられるかと思うと楽しみです。リメイク版もなかなか綺麗ですしね。…でもこうしてみるとサターンオリジナル版も味がありますよね?